HOME/COLUMNS/L85A2(SA80)完全解説|欠陥から名銃へ、英国軍制式ライフルの波乱の歴史
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 正式名称 | L85A2 / SA80 A2 |
| 開発国 | イギリス |
| 原設計者 | RSAF エンフィールド |
| 改修担当 | ヘッケラー&コッホ(H&K) |
| 採用年(改良型) | 2001年 |
| 口径 | 5.56×45mm NATO |
| 全長 | 785mm(ストック展開時) |
| 銃身長 | 518mm |
| 重量(空マガジン) | 約5.1kg |
| 装弾数 | 30発(STANAGマガジン) |
| 発射速度 | 約610〜775発/分 |
| 作動方式 | ガス圧作動、ブルパップ・セレクティブファイア |
| 現在の状態 | 現役(イギリス軍制式) |
1960〜70年代、イギリス軍はL1A1 SLR(セルフローディングライフル、FN FALの英国版)を制式ライフルとして使用していました。しかし7.62×51mm NATO弾を使用するこのライフルは、より軽量な5.56mm NATO弾を採用した米軍のM16に比べ、射手への負担が大きく、携行弾薬数でも圧倒的に不利でした。
こうした状況を背景に1970年代、英国防省は次世代小火器開発プログラム「SA80(Small Arms for the 80s)」を始動させました。設計を担ったのはロイヤル・スモールアームズ・ファクトリー(RSAF)エンフィールド。当時最先端の設計思想として欧州各国で注目されていたブルパップ方式を採用し、5.56mm NATO弾に対応した現代的なアサルトライフルを目指しました。
ブルパップ設計とは、マガジンをトリガーより後方の銃床部分に配置するレイアウトのことです。この設計により全長を短くしながら長い銃身(518mm)を確保できるのが最大のメリットです。同じブルパップ設計を採用した銃としてはステアーAUG(オーストリア)やFAMAS F1(フランス)が有名で、1980年代の欧州において先進的な設計哲学として広まっていました。
1985年、L85A1としてイギリス陸軍に正式採用。フォークランド紛争(1982年)に間に合わなかったものの、74年ぶりの制式ライフル更新として大きな期待が寄せられました。コンパクトかつ現代的なそのシルエットは、当時の英国軍兵士に新時代の到来を感じさせるものでした。
しかし実戦投入後、現実は期待を大きく裏切りました。L85A1は製造品質のバラツキと設計の詰めの甘さが重なり、作動不良・ジャムが頻発するという致命的な問題を抱えていたのです。
特に1990〜91年の湾岸戦争(砂漠の嵐作戦)では、砂漠環境での作動不良が相次ぎ、英国兵士から激しい不満が噴出しました。砂や埃が内部に入るとすぐにジャムし、頻繁な清掃なしでは使い物にならないという現場報告が続出しました。一部の英国特殊部隊員はL85A1を実質的に放棄し、米軍から借用したM4カービンや自隊で調達したMP5を使用したとも記録されています。
批判は英国内メディアにも広がり、「£400(当時の調達価格相当)を無駄にした設計ミス」「史上最悪の突撃銃のひとつ」と酷評されました。英国議会でも調達失敗として追及され、防衛省は深刻な対応を迫られることになります。当時の英国防衛産業にとって、SA80の失敗は国家的な恥とさえ言われたほどです。
| 問題点 | 詳細 |
|---|---|
| 砂漠環境での作動不良 | 砂・埃に対する耐性が著しく低く、清掃後もすぐ再発 |
| コッキングハンドルの破損 | 頻繁に壊れる強度不足の構造 |
| マガジンリリースの不確実性 | マガジンが意図せず落下することがある |
| 部品の耐久性不足 | 各種スプリング・部品が早期に劣化・破損 |
| 左利き非対応 | 排莢ポートが右側のみで左利き使用時に薬莢が顔前を通過 |
| ガス調整システムの問題 | 信頼性の低いガス圧調整機構 |
| 分解・清掃の煩雑さ | フィールドでのメンテナンスに時間がかかりすぎる |
これほどの問題が明らかになると、英国政府内ではHK416や他の欧米製ライフルへの全面移行も検討されました。しかし莫大なコストがかかるライフルの全交換は現実的ではなく、抜本的な改修という道が選ばれることになります。
2000年、英国国防省は起死回生の策としてドイツのヘッケラー&コッホ社(H&K)と改修契約を締結しました。HK416、MP5、MP7など世界最高水準の銃器を数多く生み出してきたH&Kに、L85A1の全面改修を依頼したのです。
H&Kのエンジニアたちはライフルを一から分析し、80箇所以上にわたる大規模な改修を施しました。改修にかかったコストは1丁あたり数百ポンドに上り、当初の調達費を上回ったとも言われます。しかしイギリス軍は全交換よりも現実的なコストとして改修を選択し、2001年に改良型「L85A2」として完成させました。
| 改修箇所 | 改修内容 |
|---|---|
| ガス圧作動システム | 信頼性の大幅向上、環境耐性の根本的な強化 |
| コッキングハンドル | 堅牢な素材・設計に全面変更 |
| マガジンリリース | 確実な作動のため完全再設計 |
| 各種スプリング | 耐久性の高い高品質品に全交換 |
| トリガーグループ | 動作安定性と引き心地を大幅改善 |
| ガス調整部品 | デテントシステムを信頼性の高い設計に変更 |
| 外装・表面処理 | 耐食性・耐摩耗性の全体的向上 |
| その他内部部品 | 多数の寸法精度・材質改善 |
この改修の結果、2001年に完成したL85A2は前身とは別物と言えるほど信頼性が向上しました。砂漠でも極寒地でも安定して作動し、「かつてのL85A1とは全く別の銃だ」という評価が英国軍内で定着していきます。H&Kの技術力が、失敗作をよみがえらせた歴史的な改修事例として、銃器史の中でも語り継がれています。
L85A2の本当の試練は2001年以降の実戦でした。アフガニスタン戦争(2001〜2014年)とイラク戦争(2003〜2009年)という二つの大規模紛争で、L85A2は改修の成果を証明しなければなりませんでした。
砂塵が舞うアフガニスタンのヘルマンド州での長期作戦においても、L85A2は概ね良好な信頼性を発揮しました。現地に派遣された英国兵士からは「L85A1と同じ銃とは思えない」「H&Kが別物に作り変えた」という証言が数多く記録されています。かつて英国兵士が忌み嫌ったライフルが、今度は実戦において信頼を勝ち取ったのです。
もちろん完全無欠ではなく、特に長期使用後のメンテナンスサイクルに関する課題や、より高度な光学機器マウントシステムへの要望も上がりました。こうした実戦の声を受けて、さらなる改良型L85A3の開発が始まります。
2016年から導入が始まったL85A3では、以下の主要改良が施されました:
L85A3はイギリス軍の現在の主力制式ライフルとして、今日も世界各地の任務に就く英国兵士の手に握られています。
独特なブルパップシルエットを持つL85A2は、多くのFPSゲームで英国軍の象徴的武器として描かれています。
**バトルフィールド4(BF4)**では、アサルトクラスの主力ライフルとして登場し、バランスの取れた性能でプレイヤーに愛用されました。FN SCAR-LやHK416と並んで、BF4屈指の使いやすいライフルとして現在も語り継がれています。独特のブルパップシルエットはゲーム内でも一目でわかる存在感を放ちます。
またコール・オブ・デューティ:ゴースト、バトルフィールドハードラインにも登場。英国軍が絡むシナリオでは定番の登場銃として、世界のゲーマーにそのシルエットが刷り込まれています。
さらに近年のFPSでは、ドラグノフSVDなどの東側狙撃ライフルと対比させる形で、西側正規軍の象徴としてL85A2が描かれることも多く、「西側・東側の現代ライフル比較」という文脈でもよく話題に上がります。ゲームを通じてL85A2を知り、実銃やエアガンへの興味を持ったという方も少なくないでしょう。
L85A2のエアガンは選択肢こそ少ないですが、こだわりの高品質な製品が揃っています。エアガン選びの基礎知識についてはエアガン入門ガイドも参考にしてください。
VFC製L85A2は、ドイツH&K社の正式ライセンスを取得したリアル志向のガスブローバックモデルです。ブローバック動作時の衝撃とリコイル感が実銃に近く、コレクターやミリタリーリアリズム重視のシューターから特に高い評価を得ています。フルメタルボディが持つ重厚な質感は手に取るだけで別格の満足感をもたらします。
ARES製L85A2は電動ガンとして安定したパフォーマンスを提供するモデルです。バッテリー動作の安定性はサバゲーフィールドでの実用性を高め、ガス切れを心配せずに撃ち続けられる点が最大の魅力です。冬場のフィールドでもパワーダウンせず安定して動作します。
| 比較項目 | VFC(ガスブローバック) | ARES(電動ガン) |
|---|---|---|
| 動作方式 | ガスブローバック | 電動 |
| リアル感・コレクション性 | ★★★★★ | ★★★☆☆ |
| サバゲー実用性 | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
| 価格帯 | 高価格帯 | 中〜高価格帯 |
| 冬季対応 | 要温度対策(動作低下あり) | 全季節安定動作 |
| おすすめ用途 | コレクション・インドア | サバゲー・アウトドア全般 |
詳しいスペックや最新価格はL85A2カタログページでご確認ください。
SA80(Small Arms for the 80s)はイギリス軍の小火器開発プログラムの総称です。このプログラムから生まれたライフルバリアントが「L85」で、初期型L85A1をH&Kが2000年代に約80箇所以上改修して完成させたのが「L85A2」です。SA80ファミリーにはL85A2(ライフル)のほか、L86A2(軽支援火器LSW)、L98A2(訓練用カービン)なども含まれます。つまり「SA80」という大きなプログラム名の中に、「L85A2」というライフルモデルが属している関係です。
設計と製造品質の両面に問題がありました。コッキングハンドルや各種スプリングの耐久性が著しく不足しており、1990〜91年の湾岸戦争では砂漠環境での作動不良が多発して兵士から猛反発を受けました。当時の製造を担当したRSAFエンフィールドが民営化の過程で品質管理が低下したことも一因とされています。また、ガス圧調整システムの基本設計にも問題があり、H&Kによる全面改修が必要なほど根深い問題でした。
最大のメリットは「全長を短くしながら長い銃身を確保できる」ことです。L85A2は全長785mmでありながら銃身長518mmを実現しており、同じ銃身長の通常設計ライフルよりずっとコンパクトです。市街地戦や車両乗降など取り回しが重要な状況で有利になります。デメリットは左利きへの非対応(排莢ポートが右側のみ)、マガジン交換が体の後方になるため慣れが必要な点、トリガーメカニズムが長くなりトリガープルに影響する点などです。ステアーAUGやFAMAS F1も同じブルパップ設計を採用しており、それぞれ独自の解決策を持っています。
はい、L85A2(および最新改良型L85A3)はイギリス陸軍・海兵隊の現在の制式ライフルです。L85A3は2016年から導入が始まり、ピカティニーレール対応ハンドガードを採用することで各種戦術器材の搭載が大幅に改善されています。今後はより軽量な次世代ライフルへの移行も検討されているとの報道もありますが、現時点ではL85シリーズが英国軍の主力として活躍しています。
最も有名なのはバトルフィールド4(BF4)で、アサルトクラスのアンロック武器として人気を博しました。他にもバトルフィールドハードライン、コール・オブ・デューティ:ゴースト(CoD:ゴースト)などのFPSに登場します。英国軍が関与するミッションや作戦をテーマにしたゲームでは定番の登場銃であり、特有のブルパップシルエットからゲーマーにも知名度が高い一丁です。実際にゲームでL85A2を使い、実銃・エアガンに興味を持つプレイヤーも多くいます。
現在主に入手できるのはVFC(ガスブローバック)とARES(電動ガン)の2製品です。VFC製はドイツH&Kの正式ライセンスを受けた精巧なモデルで、ブローバック動作を含めたリアリズムが特徴です。ARES製は電動ガンとして安定した動作性能を誇り、サバゲーの実用途に優れています。どちらもL85A2のブルパップシルエットを忠実に再現しており、コレクターにもサバゲーマーにも対応した製品です。エアガン選びのガイドも合わせてご参照ください。
残念ながら、L85A2はほぼ右利き専用設計です。ブルパップ設計上、排莢ポートが右側のみに設けられており、左利きが使用すると排莢された薬莢が顔の前を通過してしまいます。これは初期型L85A1から続く設計的欠点で、L85A2・L85A3でも根本的な解決はなされていません。左利きの兵士にとっては依然として使いにくい銃であり、訓練上の課題として指摘され続けています。一部の部隊では左利き兵士を他の銃に割り当てる運用もされているとのことです。
L85A2(SA80)は、失敗から学び、世界最高水準の技術で生まれ変わった稀有な銃器の歴史を持ちます。
エアガンとして楽しむなら、リアル派・コレクター向けにはVFC製ガスブローバック(/airguns/l85a2-vfc)、サバゲー実用派にはARES製電動ガン(/airguns/l85a2-ares)がそれぞれおすすめです。詳しいスペックや最新の価格情報はL85A2カタログでご確認ください。
// RELATED GUN
イギリス · 1985年
L85A2 (SA80 A2)
// SUPPORT GUNSDB
GUNsDBはすべてのコンテンツを無料で提供しています。
役に立ったと感じたら、コーヒー1杯分の支援をいただけると嬉しいです。
アカウント不要 · 任意の金額